あ…ありのまま今起こった事を話すぜ!
俺は地下への階段を降りたと思ったら、流れるように金を払っていた。このときはまだ冷静で、割引を伝えることも怠らなかった。しかし問題はこの後だ。
黒レザーのベンチシートに腰を掛けた後だ、、予想にも想像にもしないことが起こったんだ。
な…何を言っているのかわからねーと思うが、俺も何が起きたのか分からなかった…頭がどうにかなりそうだった…催眠術だとか超スピードだとか、そんなチャチなもんじゃあ断じてねえ。
もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ。
みんなが泣いた あの夏の夜
あれは暑い夏の夜だった。そこには誘い込まれるように入っていった。思えば数十分前、池袋の人気店に入ろうと思ったら、ラーメン屋の長打の列に臆して素通りしたっけな。
なのに、なぜあそこへはすんなりと入れたのだろう。やはりサロン前にはオヤヂが必要だ。自然な形で誘引してくれる。非常に心強い。
いまとなっては悪魔の誘いとしか思えないが…
地下は湿気で少し蒸れていたが、店内にはほどよい冷房がかけられひんやりしていた。いつリニューアルしたのか、内装及びシートが全て改装されて綺麗になっていた。
シートは黒のベンチ。サイズは並。それが不規則に、しかし配置良く並べられ、各席の間仕切りには薄いすだれのようなもので目隠しされていた。
テンポの速いBGMが往年のピンクサロンを醸しだし、暗闇を照らすカクテル光線が緊張と不安を和らげてくれる。
ボーイがお茶を持ってきた。ガラスのコップだ。もちろん手はつけない。メスには手をつけさせてもらうが、フフフ。。
ふと店内を見渡す。だれもいない、というか気配がない。おそらく、いや間違いなく店内には俺一人。待機嬢は、2名、多くても3名だろう。
店の規模、地域性、時間帯、なにをとっても期待できる要素はない。が、フラっと誘われるように怪しげな入り口を降りるのが好きだ。ほとんどが予想通り、時に期待はずれ、まれに逃げ出したくなるような事件に遭遇するが、当たりを引いたときの感激はひとしおだ。
それに最近はピンサロのレベルも上がっていて、場末サロンとはいえ、予想の範疇を超えるモンスターはそういない。。。
あくまでも私の中での考えだが。
これから現れる嬢も良くて30代、悪くて40代、その上は、、、さすがにない、、、かな。。。
と思ったら、あった!あったんだ!まさか、まさか、そのまさかが起こったんだ!
昨今のピンサロでは考えられない、まるで昭和50年代にタイムスリップしたかのようなあの衝撃、ハレー彗星が衝突するかのようなディープインパクトっ!!
目が点になるとはこのことかぁぁァアアァ!!!
いいか、あ…ありのまま今起こった事を話すぜ!
な…何を言っているのかわからねーと思うが、俺も何が起きたのか分からなかった…頭がどうにかなりそうだった…人妻だとか熟女だとか、そんなチャチなもんじゃあ断じてねえ。
あれは…ババァだ!お婆ちゃんだ!よぼよぼの高齢者だ!
後期高齢者(75)まではいかないだろう、しかし、間違いなく60は超えている。あの肌質、シワ感、祖母なる愛おしさ。
俺は甘くみていた。現代サロンのレベルの高さ、昨今のピンサロ事情に安堵していたのかもしれない。しかし、そんな思いは一瞬で消し飛んだ!
やはり風俗は怖い、場末突撃はリスキーだ、HPが整えられていない店でのフリー宣言は何が起こるかわからない。
もっと恐ろしいもの、生粋の場末サロンの片鱗を味わったぜ。
ここからは、その対決を語っていこう。といってもナニするわけじゃない。ナニされただけだ。
結果だけ先に伝えるが、勝負には負けたが内容には勝った、、、いやそんなカッコいいものじゃないな。。。
ただ後味の悪いものだけが残ったよ。俺も、婆ちゃんも、お店も、、、全てだ。
みんな心では泣いていただろうよ。
ごめんよ、、婆ちゃん。
出会いは突然だった。ふいに現れたんだ。いや正確に言うなら、突然に現れたが、動きはノロかった。暗い店内に足をかけぬ様に、転ばぬよう、シートの手すりを確かめ、ゆっくりとゆっくりと背後から近づいてきたんだ。
「オマタセーシマシタ~♪」
甲高い声で登場したと思ったら、スローな動きで近づいてくるだろう。
やっちまったァァァアアアァアァ!!!
叫んだよ。
だってシワシワなんだぜ。手とか足がシワシワなんだぜ。しかも歩くたびにプルプルしているし、ていうか、なんでそんなに可愛いランジェリー着てるのさ。
腕も足もさ、肩も背中も丸見えじゃん。お婆ちゃん、寒くない??ていうか、杖いる!?持って来ようか?
髪も綺麗にアップしてさ、しかもゴム紐じゃなくて、シュシュなの。可愛くしてるの。こういう仕事だから少しでも可愛く、女を頑張ってるの。
メイクもいいよ。顔なんて真っ白に塗っちゃってさ、まつげもビシッとあげて、アイラインもグロスも綺麗にひいてるんだ。でも悲しいかな、シワは消えないのって。。。
ばぁちゃんよぉ~、もう言葉がでてこないよ。
努力は認めるけど、こういう仕事だからせめて可愛くねって、それも分かるけど、問題はそこじゃないんじゃない。いくら場末サロンと言ったって、60超えたらさすがに不味いでしょ。お店もなんで採用したのさ。
これ酷使だよ、高齢者酷使。超ブラック。だってプルプルしてんじゃん。こんな身体でなにができるっていうのさ、身を屈めるのも辛そうじゃん。狭いシートに横になって、身体を片手で支えながらフェラができる?この身体でさ。
でもやる気なんだよね。こっちの不安も気にしないでさ、ボロリと乳をほっぽり出してさ、、、
おっおぉ!意外にパイオツ大きいね、張りもあるし、Eはあるんじゃない!
ってオイオイ、なに下着まで脱いじゃってんの。調子に乗っちゃダメ。舐めないって!手マンも絶対にしないって!てかフリーだよ。サービス良すぎない?生理宣言でも気にしないよ。
あっ、、ごめん、あがっちゃってるか。。。だよね、さすがにね。
ゴメン、婆ちゃん。言い過ぎたよ。そんな顔するなよ、ちゃんと脱ぐからさ。
俺もやることはやるから、、さ。
さてと、こうなったら仕方ない、覚悟は決めた。息子にも挨拶をさせるか、、ってあれ?
ありゃりゃ~息子が照れてるよ、珍しいこともあるもんだ。いつでもどこでもね、ズボン脱ぐときにはちゃんと表に出て挨拶できるのに、なんか今日は奥に引きこもってるな。
おい、おいって、婆ちゃん来てんぞ。久しぶりだろ、数年ぶりだろ、出てきて挨拶しろって!
えっ?なに、気分が悪い。ダメだよ、そんなこといっちゃ。婆ちゃんやる気なんだから、せめて挨拶ぐらいしろって。困るよぉ。
ちょっちょ、婆ちゃんなにやってんの、強引。ちょっと待って、待てって、いまの時代のガキは強引にやっても逆効果。誉めて宥めて、優しくしてやんなきゃ。
ほらね、余計にひっこんじまったよ、、ダメだよ強引にしたら、意地はっちまうよ。
ん?なに!とりあえず婆ちゃんに任せとけって??
はぁ~だからそんな問題じゃないんだっ、、、
ニゅルぅ~っ、ポンっ
はぅっ、な、な、なんだこれ、、なんだこれは、、、う、宇宙?
んん、あれ、あれれ、なに、なにこれ、なんだこのヌメヌメ感は、ねっちょりと言えばいいのか、ぬっちゃりと言えばいいのか、不思議な心地で、、、き、きもちぃ?もしかして、キモチィィ??
あっアァ、あわわわわ、ちょちょっ!婆ちゃんナニしてんの、息子が、息子が笑ってるよ!喜んでるよ!
おっおぉーースゲー、ついに息子が婆ちゃんと対面したよ!!いったい何年ぶりだよっ!ババァに起こされるのは…
さすがババア、老いてなお盛ん、積み重ねてきたテクは伊達じゃない!
…… …
…… …
でもね、やっぱりだめだったんだよ。最後まではダメだったんだよ。
だって婆ちゃんが、婆ちゃんが、もたないんだよおぉ。もう身体が泣いてるんだよ。支えられない、体勢が辛い、身体を起こせないって、顔は笑ってるけど、身体が哭いているんだよ。
支点にする右手に力がはいらないから、おっぱいごと全体重を俺にあずけちゃってさ。顎だけを上下させて、口でパクパク吸い込むんだ。
まるで、陸に挙げられて必至に息を吸い込む鯉みたいにさ、口をパクパクさせてさ、亀頭とカリ先の数センチだけをなんとか上下させるんだ。
それも勢いが良かったのは、初めの1、2分かな。あとはもう…ね、見てられなかったよ。
それは息子も同じ気持ちだった。強引に起こされ、挨拶したけど、すぐに奥に引きこもっちまった。その後は、婆ちゃんに起こされた自分を恥じたのかな。。。もう起こしてくれるなって感じで、、、
動きもスローだし、動く範囲内が極々限定的だし、つらそうだし。。。
見たくなかったんじゃないかな。衰えた婆ちゃんを、こんな婆ちゃんを見たくなかったんじゃないかな。
一瞬、ほんの一瞬だけむくりとしたけど、そのあと機嫌が良くなることはなかった。
でもね、それでもね、婆ちゃんは息子に話し続けた。
ほら起きろ、婆ちゃんだぞ。おめぇの好きな好物もってきたからおぎろぉ、太郎、婆ちゃんだぞって。。
もうね、涙がでそうだったよ。婆ちゃんの横顔。責任感じちゃってさ、焦りがみえてさ、必死なの。動きは変わらず超スローだったけど。。。
でさ、俺もう いたたまれなくなっちゃって、言ったんだ。
婆ちゃんもういいよ。今日は難しいみたい、もう休もう…って。
そんときの婆ちゃんの顔をさ、いまでも思いだすんだ。
そうかぁ、そうがぁ~だめかぁ~、ごめんな、ごめんな~婆ちゃんでごめんなぁ。ってね、なんていったらいいのかな、安堵と悔しさと恥ずかしさが混ざり会うような表情がさ。
このあとちょっと話したんだ、婆ちゃんと。
婆ちゃんの名前は「萌(もえ)」、萌婆ちゃん。歳は聞かなかった、いや聞けなかった。
萌婆ちゃんは、アルバイトで週一回の勤務。今日はたまたまその1日、だからこの出会いは奇跡なんだ。
お昼は違うお仕事してるみたいで、夜職は初めて、、未経験の素人さんだ。
この夜には他にもう一人女の子がいたみたい。その子も婆ちゃんかな?
よかったら呼んで来ようか?まだ時間あるじなぁ、その子ならできるかも…って言われたけど、丁重に断ったよ。これ以上、萌婆ちゃんに恥かかせられるかってんだ。
最後は、心からのありがとうを伝えてお別れしたよ。
まだまだ時間あるから…という萌婆ちゃんの静止を振り切ってね、駆け足でお店を出たよ。
その時さ、受付の親父が、「あっ、ちょっ、えっ??ありがとうございました」って小さく呟いた。湿気がこもる階段を上がると、俺を誘因した親父も申し訳なさそうに会釈した。
別に文句を言うつもりはない。苛立ってもいない。怒ってなんかもいない。ただ悲しかった。
イケない悲しさとか、なんでこんな目にとか、そういう悲しさじゃない!
萌婆ちゃんを悲しい気持ちにさせたこと。萌婆ちゃんのような年寄りを採用しなければならないこと、そして、萌婆ちゃんをつけたことをお店が申し訳ないと感じていることに、とても悲しかった。
ばばぁだろうが、ヨボヨボだろうが、干上がっていようが、仮にもピンクコンパニオンとして採用したんだ。だったら嘘でも自信を持て、申し訳なさそうにするな、悪者を貫け、それが風俗店というものだし、なによりも萌婆ちゃんへの礼儀のはずだ。
悪人になりきれない店と俺、そして、ピンクコンパニオンとしての限界を悟った老婆、、、
そんな小心者と傷心者と焦心者たちが、ただただ悲しかった。
この日、この夜、勝者はいない。あるのは敗者だけ。ピンサロの神様は時に残酷なことをする。
久しぶりに神を恨んだ、、夏の日の夜だった。。
おしまい。
※この物語は残念ながらノンフィクションです。ただし、公開したときの影響を考慮し、店名は非公開とさせていただきます。この話は夏の怪談として、皆さまの心の中に留め置いていただければ幸いでございます。
再訪率
【女の子評価】 萌が悪いわけじゃない
【店舗総合評価】 もっと求人に力を入れろ!あと自信がないなら案内するな!
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