9月も中旬を過ぎたというのに、まだまだ暑い。だが、秋は確実に近づいており、日のお落ちる早さでその到来に気付く…。
今、まさにその刻限だ。
空から夕闇がなくなり、街が本格的な闇に覆われようとしている。いや、もとい、この街はもう数年も前から“闇”に覆われっぱなしなのかもしれない…。
いったいその闇とは何か?そして、この街とは、どこを指すのか??
まず街を覆う闇。
それは、ここ数年の間、この街を包み込む負のオーラのことだ。かつてこの街は、某県の一地方都市ながら、大小100もの風俗店が軒を連ねる一大風俗都市であった。そして、ただ多数の風俗店が乱立しているというだけでなく、その地名を冠したご当地流のプレイが、非常に人気を博した。
街は平日でもムラムラした男達とそれを狙う客引きでごった返し、週末にもなると県内外からバスを貸切、団体で現れては集団で抜いて帰るツアー客など…その街は風俗により栄華を極め、換言すれば、風俗によりその街は成り立っているといっても過言ではなかった。
しかし、街はいつしか自分でも気付かないうちに大きくなり過ぎてしまった。
噂が噂を呼び、増え続ける利用客。そして、それを狙う風俗店。いつしか、各風俗店たちは客の取り合いをはじめるようになり、店頭での客引き行為に力を入れるようになっていった。
風俗街に一歩足を踏み入れた男は、利用客に限らず住民、ただそこを散歩しているご老人ですら…、男であればお構いなしに声を掛けられる状況になった。最盛期は10㍍程度歩くだけで、10人以上の客引きに声を掛けられるほどに…街は客引きで溢れた。
もし風俗街における客引きの人口密度を計算したならば、この街は圧倒的に一位。恐らく全盛期の歌舞伎町を遥かに凌駕するぐらいの客引きがいたであろう。
増えすぎた客引きは街の景観を乱し、店同士、客引き同士、または客引きと通行人など、大小の小競り合いが頻発するようになった。そして、街にはボタンを押せばスグに警察が飛んでくる!といった警戒ボタンが、そこかしこに設置された。
さすがにこうなってしまっては、いくら風俗の街とは言え、近隣住民も黙ってはいない。その頃には完全に定着した「風俗の街」というレッテルの解消、そして、街の治安維持、更には客引きの一掃を計り、とうとう自治体と一緒に風俗店の一斉摘発に乗り出した。俗にいう浄化作戦である。
それから数年。今その街は、過去の栄華が夢のごとく、廃墟といっても言い過ぎではないぐらいに寂れ、廃れ、負のオーラという闇で覆われてしまった。
近年は寂れた街を復活すべく、B級グルメを招致しようと色々と計画しているようだが、悲しいかな、現状を見るにその計画は成功しているとはいえない。
なんの因果であろうか…。
風俗により発展した街が、風俗により街を浄化するはめになり、風俗により街が廃れてしまうとは…。
ここまで話せばもうここがどこかお分かりだろう。
禁断の禁じ手を解禁し、「NK流」というご当地プレイにて、一躍関東屈指の大歓楽街を築いた街。ご存知…西川口だ。
私は今、その西川口にいる。街は荒廃し、人通りもまばら。目に見える少数の風俗店は、皆全て??ごく真っ当なホテルヘルスとソープランドのみ。
そんな寂れた街-西川口-になぜ今、ピンサロをこよなく愛する私が足を踏み入れたのか??
読者の方もその辺には大いなる疑問を抱くと同時に、もしかして…という得もいえぬ期待感を持っていることと思われる。
この大いなる疑問と得もいえぬ期待は、相反するようで、実は直結する。
-疑問-
なぜ荒廃し、もはや風俗は廃れたといっても過言ではない西川口に足を踏み入れたのか?
-期待-
もしかしてNK流が復活してのか?
疑問を抱く裏には何かしらの期待がある。そして、それが西川口という曰くつきの街であるならば、その期待の答えは自ずと「NK流復活か?」との解が導き出されて当然だろう。
事実、その通り。
私が西川口に足を踏み入れた理由は…
「西川口にピンサロ復活の(あくまでも)噂あり。しかも当然にNK流!?」
との情報を耳にしたからだ。
当然ことながら、この情報に私は色めき立った。ピンサロをこよなく愛する私であるが、実は私と西川口との因縁は深い。
若かりし頃…といっても30代前半だから数年前だが、多いときには週4日以上、足繁く西川口に通ったものだ。特にオキニがいたという訳ではない。西川口東口に出てすぐにメインストリートに入り、客引きに声を掛けられては写真をチェック。ぐるぐると何週もしてから、その日遊ぶ店を選ぶ。
素直に、街の雰囲気と女子と合体するというNK流に、ただただ魅せられていた。
短期間の間にあまりにも通ったので、なじみの客引きもでき、超人気嬢にキャンセルが出たからと、特別に案内してもらったこともあった。
今思えばいい時代だった。
素人童貞である私が、まず普通に生活していては出会えないような極上の美女とそう高くない料金で、コトを構えることができたのだから。もちろん、逆の体験も多数経験した。考えられないようなおデブさんの相手もしたし、予想の遥か上をいく、糞ババァとも相手をした。
ただ極上の美女であろうと、今ならまず起たないであろうと思える空想上の生き物だろうと、有無を言わず戦った。
若かかった…。勢いがあった…。でも辛いこともあった…。
そんなこんなで、あくまでも噂。真偽は全く闇の中であるが、NK流復活の噂は私の心を躍らせ、そして、私を数年ぶりの現地に辿り着かせた。
これから私は昔を思い出し、西口のメインストリートに向かう。恐らく客引はいないだろう。栄華を誇ったビルも空きテナントばかりだろう。しかし、噂が本当であれば、周囲を巡回する私をみて、恐らく誰が声を掛けてくるだろう。
その時が勝負だ。
私は駅前で缶コーヒーを飲み、一息ついてから歩を進めた…。
つづく。
To Be Continued.