その壱はこちら。
その弐はこちら。
つづき。
と笑顔で手招く男をみて、ひとまず潜入が成功したことを確信した。
店内に入るとスグに受付のようなデスクがある。しかし、そこには料金表や在籍写真など一般的にあるであろうものが一切なく、また料金の支払いも既に済ませていたため、入店したその足でブースへと案内された。
受付を左に曲がると中央通路があり、左右対称にブースが3席?ずつ計6席か…。各ブースは天井から床上30センチ程度までカーテンで覆われており、外から中の様子は確認できない。
店内は一見して普通のピンサロとそう変わらなかった。
狭い店内は、うすピンクの照明に照らされ、室内やや明るめ。BGMはあったか、なかったか…。どうにも覚えがない。
私は右列の2番目。ちょうど真ん中のブースに通された。
カーテン脇から中に入る。やや大きめのソファーがある。その向かいに小さな机。上には灰皿。そして、足元には衣服を入れるカゴが置かれていた。
ブースの前後を高めの衝立で覆い、右サイドは壁。左サイド(通路側)は、お伝えのように天井からカーテンがかけられているため、遮蔽は万全。ブース内からも外の様子を伺うことができず、ブースの外からも中の様子を伺えない…。
仮に中でナニが行われたとしても、誰にもそれを気付かれない。否、気付かせない。ほぼ個室のような作りになっていた。
正直、入店前の支払いや受付のスルーなど、後々思い返せば幾つもの些細な違和感に気が付くだろう。がしかし、何の事前情報や少しの知識もないまま『エンジェルシェイク』店内に入り、そしてブース内に腰掛ければ、よもやここがボッタクリ店とは誰も思わないだろう。
それぐらい店内は普通のピンサロと何ら違いはなかった。
私は用心して上着も脱がず、肩からかけている鞄も外さず、ソファーに腰掛け嬢を待った。
コートの男は私をブースに案内した後、その一つ前のブースに向かいカーテン越しに何か声を掛けた。そして、一度受付に戻り、予想外にも…
「二番シートご新規さまご新規さま。○○さんお願いします」
といっぱしのマイクパフォーマンスを店内に響かせた。
(店内を似せたり、マイクパフォーマンスをしたり、ボッタクリ店なのに芸が細かいな…)と思う私も実のところ“ぼったくられ”に来ているのだ。
店内を似せ、不必要であるパーフォーマンスまで行い、ボッタクリ店である事実をひた隠して、何とか騙してやろうと鋭意努力する店。片やその事実を知っていながら、そのこと知らないように演技に努め、怪しまれずに無事騙されようとしている客。
互いに真実を隠し、共に大いなる目的のために演技する。まるでコメディー映画のような関係が滑稽に思え、少し笑いが込み上げてきた。
とはいえ、ここは悪の巣窟。油断していては身包み剥がされる。私は気を取り直し、嬢が来るしばらくの間を利用し、これから起こるであろう駆引きをイメージしては、それに対する行動を頭の中で復習した。
私の作戦はこうだ。
一つ,全裸にはならない。ズボンも完全には脱がない。
二つ,出来るだけ受身に徹する。中途半端に責めたりしない。
三つ,追加料金を請求してきたら毅然な態度で断る。
四つ,しつこく迫られた時はボッタクリであることを伝えて時間前に退出する。
とりあえずこれらを基本事項にして、後は嬢の態度を見てその時々で対応していこう。そう考えていた。
ソファーに腰掛けること数分。嬢はまだ来ない。暇を持て余し、ふとカーテンと床の間にある隙間から通路を窺う。すると、反対側のブースに女性の足が見えた。
どうやら嬢は各ブースに待機しているようだ。思えば先ほど男も私の前のブースに何か話しかけていた。恐らくあれは嬢に準備を促していたのだろう。
(ということは嬢は最低でも2名以上居るのか…)
そう思いつつ、嬢の足(正確には足首だが)をじっくり視姦した。気持ち肌がカサついており、やや年老いているように思えた。
(ボッタクリ店だ。どうせ厚顔無恥なババァが現れるのだろう)
もとよりそう思っていたから、特に気落ちすることもなかった。
そこから数分…。
「こんにちわぁ~」
意外にも明るい声と同時にカーテンが開き、嬢が現れた。
(お、おおぉッッ!!!)
現れた嬢は予想に反して若く、そして綺麗だった。てっきり妙齢のババァが登場するものと思っていたから、これには素直に驚くと同時に…
(こんな子がボッタクリの方棒を担いでいるのか…。これなら追加料金を払いたくなる気持ちも分からなくはない…)
と少し邪まな気持ちが沸き起こった。
嬢は「ナ○キ」と名乗った。年齢は24歳だという。黒髪のロングヘアー。外見からは清楚系で大人しめの雰囲気が漂う。容姿も抜群という訳ではないが、他店でも軽くランカーに入るであろう綺麗さで、今にして思えば不自然なほどに衣服を何枚も着ていたが、それでもスタイルがいい事は容易に分かった。
嬢は私の隣に座り…
「寒いですね~」
と、まずトークにて私の様子を探ってくる。そして、矢継ぎ早に…
「おいくつですか?」「えっ全然見えないですね」「お仕事帰りですか?」
など一通り定番の世間話を交わし…
「じゃぁ~」
と前置きした上で、バッグと上着を脱ぐように指示。そして、それを終えるのを確認した後、はちきれんばかりの笑顔で…
「じゃぁ~服も全部脱いじゃいましょう♪」
と、いきなり全裸になるように指示してきた。
(来たかッ!!)
思わぬ良嬢の登場に、(この子なら…)と覚悟が揺れ動いたのは事実であるが、スキを見せては身包み剥がされる。
私は嬢の小悪魔的笑顔に反し、努めて冷静に…
「全部??」
と確認した。
「うん!全部ッ♪」
嬢は間髪入れずに変わらぬ笑顔で即答した。
つづく。
To Be Continued.
永久保存版!ボッタクリサロン潜入調査 その巧妙な手口を身をもって体験してきました!!その四-主導権-